猫背を治すが元に戻る・・・対策と施術法
猫背矯正マイスターの小林篤史です。
以前セミナーで講師である私に対して、こんなことを言った先生がいらっしゃいます。
「猫背なんて、オレでも治せますよ!!」
素敵な先生ですね。
仰る通り、ただマッサージなどの施術をしただけでも、猫背がよくなっている、背すじがスーッと伸びていることがよくあります。
しかしその猫背が治っている状態、または背すじが伸びている状態は、どのくらい続きますか?数時間経つと元に戻っていたりしていませんか?
その場で猫背がよくなっても、時間が経つと元の悪い姿勢に戻ってしまいますよね?
今回の記事では、猫背を治してもすぐ元に戻ってしまう理由と、対策、施術方法についてご紹介したいと思います。
目次
猫背を治しても元に戻ってしまう理由
昨今猫背矯正を整骨院、治療院のメニューにされている先生も増えてきたと思います。その中で猫背を治しても、元に戻ってしまう体験をしている治療家の先生はたくさんいらっしゃると思います。この理由をご存知でしょうか?
理由はシンプルで、「猫背の状態を身体が理解しつづけている」からです。つまり猫背の状態がその方の体の「デフォルト」になっているのです。もっと言い換えると、その方の姿勢の定位置が猫背なのですね。
定位置が決まっているので、いくら猫背を治してもまた元の場所に戻ります。外出しても夜には家に帰るように、同じことが日常生活で行われているのです。
猫背を治すために必要不可欠なたった1つの理論
前項の「猫背を治しても元に戻ってしまう理由」これをもう少し言い換えると、以下の言葉が出てきます。
〜形状記憶〜
形状記憶とは、文字どおり「形が記憶されている状態」を言います。猫背に置き換えると、「身体が猫背の状態で記憶されている」ことになります。よって私は猫背矯正のコア理論(重要な考え方)に「形状記憶理論」を入れております。
簡単に言うと、この形状記憶について、どう取り組むのかがポイントになります。
猫背を治す、形状記憶への2つの取り組み
猫背を治らないのは、形状記憶によるものだということはわかったと思います。ではどんな取り組みをすればいいのでしょうか?
以下の2つの取り組みをしていけばいいと思います。
1、形状記憶を打破する取り組み
2、新たな形状記憶を定着させる取り組み
順を追って紹介していきます。
1、形状記憶を打破する取り組み
まず猫背状態の形状記憶を打破、つまり壊していく必要があります。そのためには、形状記憶がどう作られているのかを知っておく必要があります。
形状記憶の構成要素
形状記憶の構成要素は以下の通りになります。
1、筋肉(筋膜)
2、軟部組織
3、骨格
4、運動感覚
5、位置覚
ざっくりと説明すると、猫背になると筋肉はその姿勢に適応するように形を変化させます。そして重力などの負担がかかる筋肉は、そのストレスに耐えるために筋線維を太くして固まります。逆にストレスがかからない筋肉は、弛緩して力がなくなってきます。
同じことが軟部組織と骨格にも言えます。猫背の姿勢に対応して軟部組織も変化し、骨格に適応していくのです。
運動感覚についてです。ここでいう運動感覚とは、動きの感覚です。つまり正しい正常な姿勢での動きと、猫背の状態の動きとでは異なります。つまり猫背の状態での動きが染み付いているわけです。
同じことが位置覚についても言えます。施術者の皆さんなら、患者様の姿勢のチェックをしたことがあるでしょう。その姿勢において、骨盤の位置や背骨の弯曲、肩や頭の位置をその場で修正した時、「あっ、これは私の姿勢ではない!」と言われたこともあると思います。
位置覚とは、肢体姿勢においての感覚です。猫背の人は猫背の姿勢が感覚的にも記憶されています。よっていい姿勢をその場で作ったとしても、位置覚は戻っていないため、またすぐ元の猫背の姿勢に戻るのです。
形状記憶を打破するために
よって上記のような形状記憶を打破していきたいものですが、私たち施術者が直接的に行なうのは、筋肉、軟部組織、骨格へのアプローチです。特に筋肉においては、形を変えていくイメージで、少し筋膜を変えることを意識しながら行なっていきます。これは軟部組織も同様です。
骨格についてです。骨と捉えると形はそう簡単に変わりません。骨が変形している場合も多く、変形したものは年がかりでしか改善しないからです。
しかしながらズレたものを戻すとかは可能です。ここは意識して行なっていきます。
2、新たな形状記憶を定着させる取り組み
施術において猫背の状態の形状記憶を打開しにいくのですが、猫背を治すためには、同時に次の2つのことを行なっていく必要があります。
1)新たな形状記憶を入れていく
2)良い形状記憶を定着させる
1)新たな形状記憶を入れていく
猫背の状態の形状記憶を打破した後、正しい姿勢の記憶を入れる必要があります。「この姿勢が正しい姿勢ですよ!」これを患者様に対して行なっていくのです。
この「正しい姿勢ですよ」を、2つの感覚を用いて行ないます。1つは「体性感覚的に行なう」ということ。つまり体の感覚として、正しい姿勢の感覚をつかんでもらうのです。
しかしながらこの欠点があります。それは体の感覚はすぐには理解できないということです。テニスのスイングにおいて、初心者がコーチに「こうですよ!」と教わってもなかなかコーチに教わったままのスイングができないように、姿勢も「この姿勢ですよ」と言われても、再現性に乏しい時はあります。
ここで2つ目の感覚を用いるのです。その2つ目の感覚とは、「視覚を用いる」ということです。百聞は一見にしかずですが、いくら人に「これが正しい」と言われても、一目見た方が理解度が早いものです。また感覚は誤差が生じやすいですが、視覚はそれが最小限に止めることができます。
始めの段階で、この2つの感覚で、新たな形状記憶を作っておくと、あとが早いのです。
2)良い形状記憶を定着させる
新たな形状記憶を作り出すと同時に、その良い形状記憶を定着させていく必要があります。前項で「体性感覚と視覚で新たな形状記憶を作る」というお話をしましたが、これを意図的に行なっていくのです。
ただクライアント任せになると、理解度によって差が生じます。よってそのためにご来院の度にその理解度をチェックするのです。繰り返すと、良い形状記憶が定着してくるものです。
猫背を治すために大切な習慣構築
これまで猫背を治すために、形状記憶というものがあり、その猫背の形状記憶を打破し、いい姿勢の形状記憶を定着させることが、猫背を治すための近道、というお話をしました。ただ普段誘惑は多いもの・・・よって猫背を治すために大切な習慣を作っていく必要があります。
今回、やらない方がいい習慣と、意図的に行なう習慣についてお伝えします。
猫背を治すためにやらない方がいい習慣
1)床すわり
床にすわると、正座以外基本的に猫背になります。理由は骨盤が立った状態を維持できないからです。特に股関節の柔軟性がない方は、背中が曲がるだけでなく、膝や腰にも負担がかかり、膝の痛みや腰痛などの原因となります。
また体育座りも猫背の原因となりますので、注意が必要です。
2)腰すわり
イスに座る際、お尻で座らず腰で座る人がいると思います。これは猫背の方の典型例です。
よっていくら施術によっていい姿勢を作ったとしても、この腰すわりをしているうちは、猫背は治りません。
3)「顔挨拶」
あえて呼び方がわからなかったので、「顔挨拶」という言葉を用いましたが、簡単にいうと挨拶の際に腰を曲げないで、顔で挨拶することです。顔で挨拶するということは、首と肩の付け根しか動いていないのです。よって顔出し型猫背になりやすいのです。
猫背を治すためにやった方がいい習慣・意識
1)骨盤を立てる
普段から「骨盤を立てる」という意識を持っておくことが大切です。何と言っても骨盤は背骨の土台です。まず土台を決めるという意識が大切なのです。
2)深呼吸を行なう
猫背になると、胸郭が狭まることが多いのです。同時に胸郭が狭まった状態でずっといると、猫背の状態で固まってしまいます。脊柱起立筋だけでなく、大胸筋、小胸筋、腹直筋、腹斜筋、肋間筋などが固まると、胸郭が動きづらくなりますから、日頃から深呼吸をするなど、意図的に動かすといいです。
3)バンザイ
普通に生活をしていると、よほどのことがない限り「腕を上げる」という動作がないものです。よって気がつくと、肩関節周りが固まり、腕が上がりづらくなります。
また猫背の方はバンザイがしづらくなります。常日頃から思い出したらバンザイをする習慣をつけておくといいでしょう。
猫背を治す施術法
では治療院の現場で猫背を治すには、どのような施術を行なうのでしょうか?
猫背を治す施術法①骨盤・股関節周り
猫背を治すには、まずは骨盤・股関節周りからです。つまり背骨の土台を整えていくのです。
重要なことは2点あります。1点は骨盤を立てることです。骨盤を立てることで、その上に背骨が綺麗に乗る形を作ります。2点目は、股関節周りの筋肉を緩めることです。骨盤を立てた状態を維持させるため、股関節周りは極力柔軟性を保っておきます。
猫背を治す施術法②背骨の動きづくり
猫背の方は、1)背骨が柔らかすぎる 2)背骨の動きが固すぎる のどちらかです。ほとんど2)のパターンです。特に背骨一つ一つに遊びがないことが多いのです。この状態で背すじを伸ばしても、背中に痛みや違和感が出るだけです。
よって背骨の遊びづくりは重要になります。
猫背を治す施術法③肩甲骨・肩関節の位置
当協会の猫背の基準の中に、「肩が前に出ている」というものがあります。よって俗にいう巻き肩も猫背に分類しています。ここでは前肩(まえかた)と表現します。
前肩は2つに大別されます。1つは肩甲骨が前に傾いているものです。肩甲骨周囲の筋肉などの作用もあいまって、肩甲骨が前に向いているケースが多いものです。もう1つは上腕骨由来のものです。上腕骨頭が前にスライドするもの、内旋しているものがあります。
猫背を治す施術法④上部頚椎、頭の位置の改善
猫背を治すのに意外と抜けるのが、頚椎と頭の位置。つまり頭がしっかり乗っていないと、猫背を治したうちに入りません。特に顎が前に突き出る顎出しは、後頭部が固まっていることが多いので、その部分への施術も大切になってきます。
猫背を治す施術法⑤その他
その他、姿勢においてはいろいろな要因から見ていく必要があります。足のアーチだったり、下腿のねじれだったり、側弯的な要素だったり、あげていくとたくさん出てきます。
ただポイントとしては、その人の「施術のセンターピン」を見つけることができるかです。つまり「この1点に向けて行なうと、結果が出る」という施術ポイントを見つけると、結果は出やすいものです。
日本施術マイスター養成協会の猫背矯正とは?
私たち日本施術マイスター養成協会の猫背矯正は、施術だけではなく、患者様の日常生活パターンなども分析していきます。
具体的には、
○ここの筋肉を緩めると自然と背すじが伸びる
○こんな簡単な体操をすると、良い姿勢が維持出来る
○その方に猫背のタイプに応じた対策を行なう
○3ヶ月という期間限定で、一気に行なう
こういうことを体系化して適切な戦略を立てて、「猫背を治す」ことにコミットしていくのです。
ただその場だけ姿勢を治すことができる先生はたくさんいます。しかしながらそれでは本当に治したとは言えません。しっかり姿勢を整えることと同じくらい、いい姿勢をキープできることが大切です。そうした本質をついた先生が選ばれるのではないかと考えております。
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